第五話 STAR DUST '61 PORSCHE 356B CARRERA GTL ABARTH

黎明期のレジンキット

もうかれこれ、20年近く前のことですが、
オートモデリングという本で、レジンキットの製作ガイドのような記事が載ったことがありました。
レジンキットそのものは以前からあったようですが、基本的に1/43で自分の技量では小さすぎたのです。
ところが、当時としては珍しく、このキットは1/24で、フジミのポルシェ356を利用する、
いわゆる「トランスキット」の形を取っていました。
しかし、当時の私には入手方法すらわからなくて、またごくわずかの限定生産ということと、
また、価格も当時のプラモデルの標準が1000円程度だったのに対し、
破格の12,000円というもので、
別世界のもののような気がして、そのうち忘れてしまいました。

ところが、そのうちヤフオクというとんでもなく便利かつ悪魔的なシステムができ、
辺境の私にもいろいろなものが入手できるようになり、
機嫌よく入落札を繰り返していました。
そんなときに、目に留まったのがコイツでした。

実はチャレンジするのは2回目です。
1回目はあまりに高額になりすぎて競り負けたのです。

これもそのうち忘れてしまいましたが、ヤフオクパトロールだけは続けていました。
そして再びめぐり合えたのです。
今回は前回と異なり、欲しいものにしか入札していませんでしたので、
多少高くなっても入手しようと思っていました。

結果的には意外に安く(といってもかなりの価格でしたが) 入手できたのです。
こんなもの紹介しても仕方がありませんが、
黎明期のトランスキットはこの程度のものだったということを
知りました。


経年変化で箱には汚れやしみがあります。
かなり大きな箱です。

最近のレジンキットの箱はプラモデルに比べると小さいので、ちょっと違和感があります。
また、箱そのものも「貼り箱」といってダンボールの上に化粧紙を貼った
高級らしさの演出がされていて、当時の感覚がうかがえます。

なんと、GETできたモノは、通番001!
といってもなんのご利益もありませんが。

開封してみると、なんとフジミの356がボディも含め、まんま入っています。
箱がでかいのはそういう理由だったんですね。
右側の写真がこのキットのオリジナルパーツ一式。
ボディのほかは、シートとインパネ、ドア内張りなどです。
完成見本のカラー写真が2枚、手書きの説明書といったところです。

肝心のボディ。実にきれいな表面です。
当時の技術としてはすばらしいです。またカタチも良く出ていると思います。
今のところ、経年変化による痛みはないようです。

実に魅力的なリア。ルーバーもきれいに抜けています。

このキットの問題点を挙げるとすれば、やはり自作パーツの多さでしょうか。
ベースキットの加工だけならともかく、エキゾーストの自作を左の写真のような説明で作るのは難しいです。
全体的な説明書といっても右の写真ですべてです。

やはり、普通のものには作れないシロモノであると思います。
20年前に感じた「別世界のもの」は20年経っても別世界のものでした。
このキットは、「自分のウデが上がるまで取っておこう」なんて考えていたら、おそらく私には一生作れないキットです。

まあ定年退職後の楽しみに取っておくことにでもしましょうか。
(定年退職後の楽しみが一体いくつあるねん!)

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